キミの音を聴きたくて


「あ、ありがと」



照れたように笑う彼と目が合って、示し合わせたようにふたりでまた笑う。



ダメだ。
錦戸くんといると笑いが止まらない。



あのことがあってから、こんなに笑ったのは初めてかもしれない。




こうして、自然に人を笑わせられる人ってすごいと思う。



私にはそんな対話能力はないし、大概面白みのない人だと言われる。



その通りだから気にはならないけれど、やっぱり話し相手がいないと複雑な心境になる。



だからこそ、日々ちゃんや錦戸くんのように、誰とでも分け隔てなく話せる人は尊敬する。




隣の席が、笑顔にさせてくれる人で本当に良かった。



それから、授業開始のチャイムが鳴るまで、私はずっと錦戸くんと話していた。

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