キミの音を聴きたくて
「えっと、どうかした?
音中さん」
「い、いえ。
なんでもないです」
そんなにジッと見ていたんだろうか。
会長が小首を傾げて不思議そうな顔をする。
そんな仕草も様になっていて、まさに非の打ちどころがない人だと感じる。
……すごい。
こんな人を「完璧人間」と呼ぶんだろう。
そんなことを考えながら、ここに来るいきさつを思い返した。
私は音中陽葵(おとなかひまり)。
今年度からこの高校に通うことになった高校1年生。
今日ここに来ているのは、入学式での新入生の言葉のリハーサルのため。
どうやら高校に首席入学だった私が選ばれたらしい。