キミの音を聴きたくて


「よく言えたな」



そう言って、天音先輩は私の頭を撫でた。



そして、いつものような嘘の笑顔じゃない、自然な顔で笑った。




「なっ、何するんですか」



いきなり女子の頭に触れるなんて、馴れ馴れしい。
彼の手を急いで振り払って、距離を置く。



やっぱりこの人は苦手。
体がそう訴えている。




「何って、軽いスキンシップだよ」



……なんだか意外だった。




てっきり彼女がいるものだと思っていたから、“ デート ” という名目で歩いていることも。



こうしてスキンシップをとろうとしてきたことも。



天音先輩は一見かっこよくてモテそうだけれど、クールで掴みどころがない人だから。



気軽に今みたいなことをするような人ではないと、勝手に思っていた。

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