キミの音を聴きたくて
「……そんなわけ、ねーだろ」
ほら、動揺すると口調が荒くなる。
これも彼の特徴といえるだろう。
そんな変化に気づけて、私の口角が少し上がった。
それに気づいて、慌ててそっぽを向いた。
「……カフェでも行くか。
急げ」
いきなり話題を変えたり、目を見ずに話しかけたり。
やっぱり、素直じゃないな。
この人は。
それから、私達はカフェや街中を巡った。
帰りは家の近所まで送ってもらったけれど、なんだか様子がおかしかったので途中までにしてもらった。
今日1日で、天音先輩の新しい一面を知れた気がする。
でも私達の間には、何か壁がある。
私も先輩も、お互いに壁をつくって一線引いた状態で接している。
だからこそ、こんなに歪で不自然な関係になっているんだと思う。
苦手だったけれど、今は……。
久しぶりに軽い気持ちのまま、私は眠りについた。