キミの音を聴きたくて
それは。
「日々ちゃん、本当に頑張っていたもんね」
確かに私は教えたけれど、それは彼女が頑張ろうとする姿に胸を打たれたから。
苦手なことを努力して克服しようとする試みが大切だ。
私はただ見守っていただけ。
最後まで粘り強くやり抜いたのは、彼女の実力だ。
それだけは強く言い切れる。
「そう、かな?
それでも、陽葵ちゃんのおかげだよ」
いつまでも謙遜し続ける彼女に苦笑いをしながらも、自分の答案に視線を移す。
「それで、陽葵ちゃんはどうだった?」
どうだったと聞かれれば、もちろん「普通」と答えるだろう。
なぜなら本当に普通だったのだから。
どんなに勉強ができたって。
努力していたって。
関係ないんだよ、そんなこと。
私が望むものはもう手に入らないんだから。