キミの音を聴きたくて
「えっと、300点満点中……え!?」
「ど、どうしたの?」
必死に計算を始める日々ちゃん。
難しい顔をして、私の答案と向き合っている。
今の驚きようは一体なんだったんだろう。
彼女が今までにない大きな声をあげて、しかもポカンと口を半開きにしている。
「に、に、296点!?」
やっと計算を終えたらしい日々ちゃんが、引き算の方が早いじゃん、とこぼす。
そっか、296点か。
入試よりも1点低かった。
「す、すごいよ、陽葵ちゃん!
学年1位だって!」
その声とともに、私の回りには一瞬にして人だかりができた。
「すごい!」「さすが!」「天才は違うな」
そんな褒め言葉のつもりのようなものが教室中を飛び交う。
でも心には響かない。
だって、どんなに勉強ができても今の私には意味がないんだから。