キミの音を聴きたくて
「日々ちゃん?」
「文化祭、一緒に回ろ?」
上目遣いで見上げる日々ちゃんからの誘いを断る理由なんてない。
それに、こんな私と一緒に回りたいって言ってくれるんだもの。
やっぱり彼女は優しい人だ。
「うん、もちろん」
日々ちゃんのようにかわいらしい笑みなんてつくれないけれど、精一杯の笑顔をつくる。
このやりとりを隣で見ていた錦戸くんは、 「いいなー」「俺も回りたいなー」などとアピールしている。
けれど、日々ちゃんはプクッと頬を膨らませている。
「ダーメ。
陽葵ちゃんは私とデートするんだからっ」
デート、だなんて。
日々ちゃんにそう言ってもらえて嬉しい気持ちと、もうひとつの感情が渦巻く。
天音先輩の言葉を思い出して、胸がドクリと嫌な音を立てた。