キミの音を聴きたくて
「私は、陽葵ちゃん達が来るのを待っていたんだよ?」
だから、私の勝ちだもん。
かわいらしい口調でそう訴えて、日々ちゃんは私の腰に手を回す。
私が男子だったなら、きっと恋に落ちているレベルだろう。
……恋なんて、したこともないけれど。
「ほら、陽葵ちゃんからも言ってあげて?」
「えー」とふざけたように不満をこぼす錦戸くんを前に、日々ちゃんが訴える。
えっと、急に話を振られても困るんだけれど。
とりあえず、ここは日々ちゃんに便乗しておこう。
「ごめんね。
錦戸くんは、他の人と回ってくれる?」
……なんだか、無難だ。
私って本当に面白くない。
自分で言ってからまた後悔する。
こんな私と一緒にいても、楽しくないに決まっている。