キミの音を聴きたくて


「みあ………っ、ぁ、うっ」



前奏が始まり、歌い出そうと息を吸う。




“ 見上げればあの空 ”



そんな歌詞を届けようとしたのに。




────声が、出ない。




「……ぁ、え、う……っ」



ねぇ、どうして。
どうして歌の神様は、私に微笑んではくれないの。



私が歌うことは、今でもいけないことですか?
一生許されないことですか?




客席からは、歌わない私に対して批判の声があがっている。



歌わなきゃ。
そう思うのに、口が思い通りに動かない。



ただ息が漏れるだけで、声なんて響かない。



……これは、あのときと同じだ。
私の光がだんだんと消えて見えなくなっていった、あのときと重なる。

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