キミの音を聴きたくて
「すごかった」
「本当にいい歌だったよ!」
「音中さんなら大丈夫だって、思ってたぜ」
そう言って微笑んでくれるのは、一緒にバンドを組んでいた鶴本くん、月野さん、米田くんだ。
月野さんはバンドをしたいと言った張本人でもあるため、私が代理でボーカルを務めることになって責任を感じていたようだ。
あまり話したことはなかったけれど、みんな悪い人ではなさそう。
演奏中も後ろから私を支えてくれた。
「あの、音中さん……」
そんな中、今にも泣きそうな顔でこちらへ向かってきたのは相川さんだ。
まだフラフラしているようだけれど、本番前よりもスッキリとした顔をしている。
「歌ってくれてありがとう。
素敵な歌でし……った」
そう言っていきなり泣き出した彼女を、慌ててなだめる。
いつの間にか、私の制服にも涙が滲んでいた。
ありがとう、だなんて。
あまり言われ慣れていない言葉に少し胸が高鳴った。