キミの音を聴きたくて
「大丈夫です。
私こそ……ありがとうございます」
彼女はきっと、この言葉の意味は分からないだろうけれど。
相川さんのおかげで私は前に進めた。
彼女に歌ってほしかった。
でも、自分の思いをこうして他の人に伝えられたことは素直に嬉しい。
不格好に微笑むと、相川さんは私にしがみついて。
「音中さん、大好き!」と顔をすり寄せる。
その様子を見て、みんなで笑った。
空気は和やかなまま、私達の発表は幕を閉じた。
それから、日々ちゃんと一緒に文化祭を回って楽しんだ。
こんなにも親切な友達がいてくれることが、とてもありがたい。
錦戸くんはついてこようと必死に懇願していたけれど、最終的に米田くんと回ることになったらしい。
心から笑えていて、もう何も心配することなんてないと思っていた。
そんな幸せもつかの間、私をさらなる悲劇が襲う─────。