偽りの婚約者に溺愛されています
いきなりですが、婚約成立です
本当はあなたが好きです
「笹岡さん。これ……よかったら食べてください。お礼は、食事に付き合ってくれたらいいな、なんて」
きれいにラッピングされた箱を差し出して、彼女は言った。中身はクッキーかケーキといったところか。
赤く染まった頬を見て、明らかにそういう意味で好意を持たれていることがわかる。
「あの。でも、困るんだけど。だって……」
やんわりと断ろうとすると、その目がうるうると潤み始めた。
「受け取ってくれないんですか。もしかして、私と出かけるのが嫌だからですか」
「いや、だから」
どう答えたらいいものか。
食事に行って、それからどうしたいのか。彼女の意図がわからない。
「いいじゃないですか。……女同士でも!私は笹岡さんが好きですから!愛に性別なんて関係ないですよ」
彼女の手から箱がドサッと落ちた。その瞬間、私は彼女に抱きつかれていた。
「う……!あの!沢井さん、ちょっと」
私は彼女を押しのけようとしたが、すごい力でしがみつかれ動けない。
「本気なんです!真剣に考えてください」
「こ、困ったな。どうしたら……」
辺りを見回す。偶然誰か通ってくれたらいいのに。この状況をどうにかしてほしい。
そう思ったが、いつもは混み合う昼休みの自販機コーナーに、今日に限って人影はない。