偽りの婚約者に溺愛されています
気持ちが混乱しています
「夢子。お見合いをしなさい」
夕飯が終わってくつろいでいると突然、父にそう言われ、私は思わずお茶を吹き出しそうになった。
それを無理やりこらえて咳きこみながら、父のほうを見る。
「うっ。……ごほっ!な!なにを言うのよ、突然。びっくりするでしょ」
そんな私を真剣な顔つきで見たまま、父はさらに言った。
「わかっているとは思うが、お前と結婚する男は次期後継者となる。誰でもいいわけじゃないんだ。最近のお前の様子を見ていたが、恋人がいるわけではなさそうだ。ならば今のうちに、初めからふさわしい相手と付き合ったほうがいいと思ってな」
「そんな。無理よ。お見合いなんて嫌よ。好きな人くらい、自分でみつけるわ」
強がって抵抗する。
確かにこのままでいたなら、そんな人にはなかなか出会えないだろう。だけど、親が決めた相手だなんて絶対に嫌だ。
「自分で見つける前になんとかしないといけないんだよ。お前の結婚相手には、もれなく会社がついてくるからな。お前ひとりの問題ではないんだ」
「でも!私にだって夢はあるの。結婚は恋愛結婚がいいと思っているから」
父の言うことはもっともだ。
恋人もいないし、会社のこともあるのだから、私が夢見るような簡単な話ではない。