偽りの婚約者に溺愛されています
もう少しお金を出せば、まだ続けてくれないかなんて考えてしまう。
きっと断られてしまうだろうけれど。

「さっきは一人にしてごめん。忘れ物を取りに行ってたんだ。あとは、少し買い物があって」

「忘れ物?まさか、料亭にですか」

私の荷物を持っていたせいなのかと考え、申し訳なくなる。

「違うよ、家に。どうしても必要になって」

「そうですか」

今必要なもの。それがなにか気にはなるが、私に関係のあるものとは思えないので聞かないことにした。

「今日はなぜここに来たんですか?話があるなら聞きます。もしもないならば、できたら着替えたいのでそろそろ帰ります。もう、苦しくって。あはは」

ベッドから下りて、襟の乱れを整える。
今日ですべてを終えたいと言われたら、潔く了承しよう。
そして、『今日までありがとうございました』と笑顔で伝える。そう決めていた。



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