偽りの婚約者に溺愛されています
「今のままの君がいいんだ。まあ、その七五三みたいな格好も、なかなか魅力的だけどな」
「七五三じゃありません。ほんとに失礼ですよね」
話しながら帯をほどいていく。
「あ、服のお金は払いますから。ありがとうございます。助かりました。苦しくて死にそうだったんです」
そう言った瞬間、彼の顔から笑みが消えて真顔になる。
「本当にむかつく女だな。服代とかそんなもの、受け取るわけないだろ」
「どうして。誕生日でもないのに、いただく理由がありません」
言い返したそのとき、帯がほどけてバサッと足元に落ちる。
「プレゼントにいちいち理由を求めるな。男みたいに見えるとか、俺にとってはどうでもいいことだが、男勝りなのは困るな。君は女性の自覚が足りない。黙って奢られとけよ」
落ちた帯を見ながら呆れたように言われ、言い返すのをやめた。
「だいたい、急に帯も外すし。もう少し女らしくしないと」
「今さらそんなことを言うんですか?……そうなんです。ずっと、自覚なんてない。そう思われて当然です」
急に勢いを失くした私に、彼はクスッと笑う。
「俺以外の人間なら、君をそう思っていてもいい。君を取られずに済む。男にも、女にもな。敵が多すぎて、俺も大変なんだよ」