偽りの婚約者に溺愛されています
桃華さんは、智也さんの言葉に一瞬笑顔になったが、すぐに真顔になる。

「修吾さんから聞いたわ。私が彼を好きだと思ってるんでしょ?」

「そうだろ?」

智也さんは平然と言う。
すると彼女は、チラッと私を見た。

「修吾さんのお見合い相手が、智也さんの婚約者だなんて、本当にどうかしてるわ。嘘までついて、なにがしたいのよ。修吾さんに全部聞いたんだから」

智也さんが私を睨んだ。

修吾さんにふりをしていたことを話したのが知れてしまい、私はビクッとなる。
彼はすぐに桃華さんに視線を戻した。

「桃華。これは嘘じゃない。さっき話しただろ?俺は本気だと。君は修吾とうまくやれよ」

「私も言ったわよね?私が結婚したいのは、智也さんだと」

「当てつけなんかしなくてもいいんだよ。修吾も君が好きだから」

「当てつけじゃないわ!私が好きなのは、智也さんよ」

ふたりの会話がピタッと止まる。
智也さんは、桃華さんを見たまま動きを止めた。

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