偽りの婚約者に溺愛されています
そう言い切る私を、彼は黙って見つめたままだ。
「私はこれから、修吾さんとのお見合いを継続しようかと思ってるんです。だって、桃華さんと修吾さんが関係ないなら、問題はないですし。彼はいい人だし、断る理由がないから。彼となら、素敵な恋愛ができそうな気がしてます」
強がって話し続ける。
だが、お見合いを継続しようと思ったのは本心だ。
私も、智也さん以外の人に目を向ける必要がある。
あなたを忘れなくてはいけないのだから。
「そんなことは許さない。素晴らしい想像力だが、君のその豊富なシナリオの中に、事実だけがないのはなぜだ」
「え?」
「どうして敢えて正解を外すのか分からないな。残念ながら、君の推理はすべてが外れている。君が的はずれな不正解を言うのは、そうなると困るから?君にその気がないからか?」
私は彼からサッと目を逸らすと、背中を向けた。
彼の言う、正解とは。
まさか。そんなはずはない。
私を好きだと、言われたことなどない。
だいたい、どう考えてもあり得ない。
だが、理由がお金じゃないなら、ほかに私と婚約していたいと思うわけとは。
「からかうのが上手ですね。なにを言われても私は信じません。あとで傷つくのは嫌ですから」
彼のほうを見ないままに、突き放すように言う。
「君は正直だ。そこがいい。俺にこの先を言わせたいなら、修吾との見合いは断って、俺の婚約者のままでいたらいい。いくらでも続きを聞かせるから」