偽りの婚約者に溺愛されています
「俺は君が気に入ってるよ?夢子さんが普段ボーイッシュなのは知ってる。前に会ったときも、パンツスーツだったし。でも、清潔感があっていいよ。そのほうが君らしい。無理すると、また後ろにひっくり返るからね。驚いたよ。失礼だとは思ったけど、笑いが止まらなくてさ」

「やだ。あれは忘れてください。本当に足が辛かったの。限界だった。だけど自分でも、いくらなんでもどうかとは思ったわ。おば様と父が慌てる顔が忘れられない。さぞや、ふたりは焦ったと思います」

ふたりで大笑いする。
修吾さんといるととても楽しい。

このままふたりで過ごしていけば、いつか忘れるのだろうか。
ため息が出るほどに素敵な笑顔も、酔いしれた甘い囁きも。

「でも、修吾さんは私でいいんですか。もちろん努力はするつもりだけど、男性のために、お洒落なんてしたことがないんです。急には変われないかも。スカートも、化粧品すら持ってはいないし」

「俺のために綺麗になってくれるの?楽しみだ。大丈夫、君ならどんな子よりも綺麗になれるさ。俺が保証するよ」



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