偽りの婚約者に溺愛されています
ストレートに、飾りのない言葉で私を褒める彼が、智也さんとかぶる。
一瞬、泣きたい心境になるが、それを吹き飛ばすかのように、思い切り笑顔をつくる。
「そんなに期待しないで。もしも嫌なら、修吾さんからお見合いを断ってください。私は慣れてるから。元々、女性にしかモテたことはないの」
「バカ言っちゃいけない。断らないよ。女性に負けるなんてプライドが許さないね。俺が君を女らしくできたなら、男冥利に尽きる。君は興味深いよ」
そう言って彼は、テーブルの上にある私の手をそっと握った。
「よろしくね、夢子さん。俺を選んでくれて、本当に嬉しいよ。兄さんには負けないから。期待していて」
彼の行為にドキッとしたが、余裕のあるふりをする。
「はい。よろしくお願いします」
彼がこの選択をしたのは、ササ印の経営権のためかもしれない。
思ってもないことを言っているだけかも。
そんなことを考えるのは、どこか卑屈になっている、私自身の問題だ。
だけど理由がどうであれ、修吾さんにがっかりされないよう、智也さんが心置き無く桃華さんとうまくやれるよう、私は頑張る。
それが自分のためでもあるから。