偽りの婚約者に溺愛されています
あれから三日ほどが経過していた。
父に言われた話を思い返し、ぼんやりとする時間が少しずつ増えていた。
これから私はどうなってしまうのだろう。
恋をしたこともないのに、本当に言われるままにお見合いをするの?
実感がまったく湧かないでいる。
彼氏ではなく、いきなり夫ができるかも知れないだなんて、今まで考えもしなかった。
「笹岡。おいっ。さーさーおーかー」
このまま、余計なことは考えずに、いっそお見合いをしてみようか。
もしかしたら相手の人を、松雪さん以上に好きになれるかも知れない。父が言うように、年も同じならば、思いがけず気が合うかも。
だけどやっぱり、そんな気持ちで会うのは失礼だ。
ずっとそんなことを思いながら、気持ちが行ったり来たりしている。
「笹岡!」
真上から大きな声で呼ばれ、頬杖をついていた手がガクッと崩れた。
「はっはい!」
驚きながら返事をする。
立ち上がって振り返ると、松雪さんが呆れた顔で私を見下ろしていた。