偽りの婚約者に溺愛されています
「父への……罪悪感ですよね?」
疑いの眼差しで俺を見上げる彼女に微笑む。
「いいよ。今はそう思っていても。無理強いはしたくない。修吾と付き合っても構わない。比べて選んだらいい。修吾か……俺か」
「そんな。そんなこと、できません」
「だが、ひとつだけ言っておく。俺は、君が他のヤツをその瞳に映すことすら嫌だ。修吾との仲は、おそらく邪魔してしまうだろう。……嫉妬深いんだ」
信じるか信じないか。
選ばれるか、選ばれないか。
そんなことは分からない。
自信があるわけでもない。
だが、無理やりこちらを向かせても、それは俺の欲しいものではないから。
「改めて言うよ。……君が好きだ。絶対に、離さないから」
なにも言わないまま俺を見つめる夢子の目には、動揺の色が広がっている。
「桃華さんのことは……」
しばらくしてから呟いた彼女の頬から、手を離す。
「それも、いずれ分かることだ。今はなにを言っても、信じないんだろ?言い訳なんてしないよ」
俺の言葉に気まずそうに俯く彼女を見下ろしながら、君ならば、必ず分かってくれると思い直していた。
その純真な心は正直な気持ちだけを認め、その澄んだ目は、きっと真実しか映さないはずだから。