偽りの婚約者に溺愛されています
「そんなことはできません。本当にやめてください。父にはうまく言いますから」
「うまく?どんなふうに?お見合いが嫌で婚約者のふりをしていただけだったのに、俺に本気で口説かれたから、怖くなって逃げ出したって?」
「智也さん!」
ふたり立ち止まる。
俺を睨むように見ながら、彼女は微かに、わなわなと震えている。
「図星か。少しは気を遣えよ」
「ちが……っ!」
嘘をついたり、誤魔化したりなどしない。
そんな君だから、次第に嵌っていった。
「心配しなくても、君の思い通りには逃げきれないよ。俺にもあとがない。このまま修吾にさらわれるなんて、ごめんだからね」
「私にはそんな価値はありません。もしも、そんなに私に魅力があるなら、今までどうしてなにもなかったんですか。あなたは異性にモテるから、私の気持ちなんて分からないでしょうけど。からかわれているだけでも本気にしてしまうんです」
俺は彼女の手をサッと繋ぐと、歩きだした。
「と、智也さん」
「そう。本気になればいい。今までになにもなかったから、俺は余計な嫉妬をしなくて済んでる。自分が可愛いと自覚しろ。俺の気持ちを勝手に決めるな」
自分のことを分かってはいないもどかしさと、俺だけに見せる顔があることの優越感。
話す度に夢中にさせられる。
君が持つ魅力は、言葉で表すのが難しい。
「修吾が好きなのは桃華だ。あいつには、君のことなんて分かるはずもない。君を本気で好きなのは、俺だけだ」
俺の話に彼女はなにも答えず、ただ熱い視線で俺を見ていた。
信じたい。
君も俺と同じ気持ちなんだと。
「うまく?どんなふうに?お見合いが嫌で婚約者のふりをしていただけだったのに、俺に本気で口説かれたから、怖くなって逃げ出したって?」
「智也さん!」
ふたり立ち止まる。
俺を睨むように見ながら、彼女は微かに、わなわなと震えている。
「図星か。少しは気を遣えよ」
「ちが……っ!」
嘘をついたり、誤魔化したりなどしない。
そんな君だから、次第に嵌っていった。
「心配しなくても、君の思い通りには逃げきれないよ。俺にもあとがない。このまま修吾にさらわれるなんて、ごめんだからね」
「私にはそんな価値はありません。もしも、そんなに私に魅力があるなら、今までどうしてなにもなかったんですか。あなたは異性にモテるから、私の気持ちなんて分からないでしょうけど。からかわれているだけでも本気にしてしまうんです」
俺は彼女の手をサッと繋ぐと、歩きだした。
「と、智也さん」
「そう。本気になればいい。今までになにもなかったから、俺は余計な嫉妬をしなくて済んでる。自分が可愛いと自覚しろ。俺の気持ちを勝手に決めるな」
自分のことを分かってはいないもどかしさと、俺だけに見せる顔があることの優越感。
話す度に夢中にさせられる。
君が持つ魅力は、言葉で表すのが難しい。
「修吾が好きなのは桃華だ。あいつには、君のことなんて分かるはずもない。君を本気で好きなのは、俺だけだ」
俺の話に彼女はなにも答えず、ただ熱い視線で俺を見ていた。
信じたい。
君も俺と同じ気持ちなんだと。