偽りの婚約者に溺愛されています
「ごめん。実はさ、元々チームに所属してたんだ。本気でバスケに取り組んでた」
「えっ。プロだったんですか」
「いや。グローバルスノーで仕事もしながらだよ。半分プロ?なのかな。試合には出てたけど」
唖然とする。
下手だなんて言っていたくせに。
「ひどい。じゃあ、負けるはずなんて初めからなかったんですね。勝算があったから、勝負したんだ」
私はもう、泣き出していた。
リセットして告白しようだなんて思い上がって、なにもかもをやり直せる気がしていたのに。
「帰ります。私をバカにして、楽しかったですか」
自分でも嫌な言い方だと思う。負けたことを当たっても、虚しいだけなのに。
「お陰さまで私は、学生時代からしてきたことに、なんの意味もなかったと実感できました。ほかの人と同じように、恋でもしてればよかったと」
「冗談じゃない。君のしてきたことが無意味だなんて、誰が言ったの。恋ならこれから、いくらでもできる。俺とね。これからの君は、バスケじゃなくて俺に愛されることを覚える。……それを伝えたかった」
優しく私を見つめる瞳。
濡れた頬をそっと拭う、温かい指。
もうとっくに始まっている。
あなたに向かって、止まらない想い。
「智也さんは……本気じゃないから」