偽りの婚約者に溺愛されています
正直になってもいいですか

婚約者の作戦です


「君のササ印での研修はもう終了にしてほしいと、松雪社長から言われたんだが。そうしてもいいかい?」

「父が?どうしてですか」

「俺に聞くよりも、君のほうに何か心当たりがあるんじゃないかい?ここにいたら、不都合なことがあるんだろ?一緒に仕事をしたらいけない相手がいるとかな」

夢子とバスケの勝負をした日から、一週間が経過していた。
あれから彼女と出かける機会はなかった。彼女の企画が通り、検査を経て、発売に至るまでの準備のため、連日残業が続いていたからだ。
もちろん彼女も同じ状況なので、修吾とは会ってはいないと思うが。

そんな中呼び出された社長室で、笹岡社長が言った言葉に、俺は首をかしげる。

「なので、来月にでもグローバルスノーに戻るといい。俺から言うことはもうないから」

「待ってください。どういうことですか。心当たりなんかありません。今は夢子さんの企画が本格化してきているんです。今月で抜けるだなんて無理です。俺から父に話をするまで待っていただけませんか」

急にどういうことだろう。人間関係ならうまくいっている。
グローバルスノーには、俺が戻らなくとも修吾がいる。
バスケットボールチームにしても、しばらくは大きな試合の予定もない。



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