偽りの婚約者に溺愛されています
「おや。今さらお兄さんに会いたいそうだよ。どうするかね?修吾さん。今の婚約者は君だからね。君が決めるといい」
「うーん、そうですね。一応、今は俺と付き合ってるんだし。できたら兄に会うのはやめてほしいですね〜。そう思いませんか、社長。だけど……そんなに会いたいなら仕方ないかなぁ」
涙を拭って、ふたりを見直す。
はっきりと目に映ったふたりは、楽しそうにニコニコと笑っている。
「どうして……?」
思わず尋ねた私に、修吾さんが言う。
「いや、笹岡社長がね。素直じゃない夢子さんに手を焼いていて。見ていられないってさ。見合いのあとにかかってきた電話で、ちょっと芝居を頼まれてさ。君と付き合うふりをすることにしたんだ」
「だって、帰ってきた途端に修吾さんに会いたいだなんて、変じゃないか。松雪くんとケンカしたとしか思えないだろう。松雪くんを辞めさせたのは俺だよ。彼の意志じゃない。彼は抵抗したが、なにか考えがあったんだろう。結局は了承して辞めたよ」
私は驚いて言葉を失った。
智也さんは、自ら去ったわけではなかった。抵抗していた?
「実は、本人の意志とは関係のない婚約者がいても、我々実業家の世界では珍しくはない。だけど、相手のある話だからけじめは必要だ。直江さんに至っては、松雪くんを返してほしいとはっきり言ってきてるからな。彼女を納得させないといけないことは、彼も分かってるだろう」
父は笑顔のまま話す。
「彼は一度、グローバルスノーに戻って考え直したほうがいいと思ってな。これからどうするかは、彼次第だがね。夢子が本当に好きなら、彼はここに戻るだろう。なにもかもを捨ててでもな」
「俺も、実は興味があってさ。あんなに真剣な兄は、見たことがないからね。どうなるんだろうと思ってさ」
「うーん、そうですね。一応、今は俺と付き合ってるんだし。できたら兄に会うのはやめてほしいですね〜。そう思いませんか、社長。だけど……そんなに会いたいなら仕方ないかなぁ」
涙を拭って、ふたりを見直す。
はっきりと目に映ったふたりは、楽しそうにニコニコと笑っている。
「どうして……?」
思わず尋ねた私に、修吾さんが言う。
「いや、笹岡社長がね。素直じゃない夢子さんに手を焼いていて。見ていられないってさ。見合いのあとにかかってきた電話で、ちょっと芝居を頼まれてさ。君と付き合うふりをすることにしたんだ」
「だって、帰ってきた途端に修吾さんに会いたいだなんて、変じゃないか。松雪くんとケンカしたとしか思えないだろう。松雪くんを辞めさせたのは俺だよ。彼の意志じゃない。彼は抵抗したが、なにか考えがあったんだろう。結局は了承して辞めたよ」
私は驚いて言葉を失った。
智也さんは、自ら去ったわけではなかった。抵抗していた?
「実は、本人の意志とは関係のない婚約者がいても、我々実業家の世界では珍しくはない。だけど、相手のある話だからけじめは必要だ。直江さんに至っては、松雪くんを返してほしいとはっきり言ってきてるからな。彼女を納得させないといけないことは、彼も分かってるだろう」
父は笑顔のまま話す。
「彼は一度、グローバルスノーに戻って考え直したほうがいいと思ってな。これからどうするかは、彼次第だがね。夢子が本当に好きなら、彼はここに戻るだろう。なにもかもを捨ててでもな」
「俺も、実は興味があってさ。あんなに真剣な兄は、見たことがないからね。どうなるんだろうと思ってさ」