偽りの婚約者に溺愛されています
やはり、予想通りでした
「智也、ナイスカット」
練習中のミニゲームで、相手からのボールを奪った俺が同期の誠司にパスをすると、彼がそのまま放ったシュートが決まった。
彼とハイタッチをしながら、リストバンドで汗を拭う。
今の俺には、バスケと仕事に打ち込む以外に、夢子への気持ちを誤魔化す方法がなかった。バスケに向き合う時間は、ただ夢中で、自分を痛めつけるように身体を動かした。
「よーし、今日はここまで。おつかれ」
コーチの声が響き、皆はコートから出る。
どれだけ、必死で彼女のことを考えないようにしても、いつも頭の中には彼女の笑顔がある。
いけないと思えば思うほど、会いたい気持ちが募る。
今はまだ、会いにいくわけにはいかない。
桃華とのことをはっきりさせないと、夢子に会う資格なんてないのだから。
「お前さ、大丈夫か?あんまり無理すると、身体を壊すぞ。今日もこれから戻って、残業するつもりか?」