偽りの婚約者に溺愛されています
溺愛注意報です!!
もうそろそろだから、しばらく待ってほしいと松雪社長に言われてから、二十分ほどが経過した。
「ほう。それで?そのサインペンは、従来のものとなにが違うのかね」
いつしか松雪社長は、私の話を興味深く聞いてくれている。
「水性なんですが、インク滲みがかなり軽減されているんです。あと、紙に吸い付くように浸透し、書いた瞬間に乾いていきます。あ、サンプルがあるのでよかったらお使いください」
バックからサンプルのケースを取り出し、色違いのものを三本差し出す。
「おお。嬉しいね。使わせてもらうよ。感想は父上に伝えよう。あ、ひょっとすると感想と言うよりは、クレームかも知れんがね」
クスクス笑いながら反論する。
「クレームなんてあり得ません。智也さんが連日残業して指導してくださったんです。彼ほどの企画開発者はいませんから。特許の申請も通ったんですよ。さすがです」
「すごいね。じゃあその、優秀なさすがの企画開発者は、君の婿殿にしていただけそうだな。どうやらそちらの事業に向いているようだ」
にこやかに話を聞いていた私だったが、松雪社長の話に胸がドキッとし、その直後に頬が真っ赤になるのが自分で分かった。