偽りの婚約者に溺愛されています
俺でよければ手伝います
『松雪課長の補佐をさせていただきます、笹岡夢子です。よろしくお願いします』
俺が『ササ印』に就任した初日、部長に紹介されて初めて、笹岡夢子に会った。
咄嗟に思った第一印象は、『綺麗な子だなぁ』だった。
すらりと伸びた身長に、足の長さが際立つパンツスーツ。
短く切りそろえられた髪に、化粧っ気のない透き通った肌。
クリッと輝く瞳の周囲を、長い睫毛がびっしりと縁取っていた。
『課長はいいよ、”松雪”で。堅苦しいのは嫌いなんだ。こちらこそよろしく』
俺が言うと、彼女の顔から緊張した表情が消えて、ふわっと笑みが浮かんだ。
『はい。松雪さん』
かわいく笑う彼女を見て、つられるように自分の顔が緩むのを感じる。
初めて出会うタイプの女性だった。
男に媚びた目線で自分を売り込むようなことも、化粧で顔を必要以上に整え、香水の匂いを漂わせたりもしていない。
清純で、ありのままを貫くような、凛とした美しさが彼女にはあった。