偽りの婚約者に溺愛されています


「私はそんなに変わりませんよ。残念だけど」

私の返答を聞いてクスッと笑うと、彼は袋から中身を取り出した。
すっと立ち上がり、私のほうへと回りこんでくる。
私の背後に立つと、私の首にネックレスをかけて、手際よく留めた。

「似合うかどうかは君が決めることじゃない。俺が綺麗だと思えばそれでいいじゃないか」

ここで見るものや、心に感じること。なにもかもがおとぎ話のようで、夢の中をさまよっているみたいだ。

汗にまみれて、お洒落を楽しむこともなく過ごしてきた学生時代には、今の状況は想像すらできなかったことだ。

「ほらね。よく似合う。かわいいよ。君は元がいいからな」

私の正面から私を見つめ、松雪さんはふわりと笑う。

私は首にかかった小さな石を、震える指先でなぞった。

「ありがとうございます。……ごめんなさい。素直になれなくて。どうしたらいいのか、全然わからないんです。いっぱいいっぱいで」

私が照れて笑いながら言うと、松雪さんは私から目をさっと逸らした。

あれ。どうしたのかな。
怒ったのか、呆れたのか。そのどちらかだろう。

「松雪さん?すみません、私といると疲れますよね。素直じゃないので……」


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