偽りの婚約者に溺愛されています
「ずっと欲しかったんですけど、父が自分で持つことを許してくれなかったんです。これ以上男らしくなったらどうする!とか言って本気で怒るんですよ。だから自分でも買えなくて。失礼ですよね、親なのに」
「あははは」
むくれた顔の彼女を見て、俺は笑った。
こんなに楽しい思いをするのはいつぶりだろう。
「ダイヤよりもボールか。確かに社長は心配になるだろうな」
「松雪さんまでなんですか。嫌になっちゃう」
プリプリと怒る彼女を見つめる。
「わかった。俺が贈るよ。俺からだと言えば、社長も捨てるなんてできないだろう」
「本当ですか?嬉しい。欲しかったんです。卒業してからずっとバスケは封印してきたから、もう時効ですよね」
化粧を知らない透き通る肌に、キラキラ輝く瞳。
俺はどうして君を放ってはおけなかったのか、ようやく答えが見えてきた気がする。
「じゃあ今度、そのボールで山野さんを負かしてやりますよ。彩香さんの前でバスケの試合をしましょう」
「おい。まさか俺もメンバーに入れる気じゃないだろうな」
「当り前じゃないですか。一緒に山野さんを倒しますよ」
ガッツポーズで気合を入れる彼女を見て、さらに顔が緩む。
「チームメイトが俺じゃ、逆に倒されるよ」
「なにを弱気な!経験者でしょう」