偽りの婚約者に溺愛されています
君は心も身体も美しい。
そこらへんにいる女性たちよりも、ずっと。
最近俺は、君が男性にからかわれてしまうのも、本当は君があまりにも綺麗で、彼らは放ってはおけないからではないかと思い始めていた。
鉄の鎧で心を隠し、必死で強がりながら自分を守る君には、彼らが本気で口説く隙がない。どうにかして君と話したいときには、そうやって近づくしかないのだ。
それと同時に、異性から惚れられるのもわかる。
女性は嗅覚が鋭い。性別を越えて、いち早く君の魅力に気づいてもおかしくはない。


勝手にそんなことを考えるのも、まさか惚れた弱みか。

「顔を見せて。俺のために、綺麗にしてくれたの?」

そっと手を伸ばし、頬に触れる。

「嫌。そんなふうに言わないで。恥ずかしいです」

隠れみのにされるくらいなら、花なんて贈るんじゃなかった。
そう思わせてしまうほどに、ずっと見ていたい。

「ウォッホン。あの、そろそろ話をしてもよいかな。ふたりで話すのはあとにしたらいい」

背後で社長に言われ、ハッとなる。
本気で忘れかけていた。

「すみません、つい。夢子さんがあまりにも綺麗で」

慌てて言い訳をしながら社長に向き直る。


「松雪くん。実は、夢子には縁談話がある。君の考え次第では、それを進める所存だ。この子には、会社を背負っていってもらいたいと考えている」




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