1 week
何だか愚痴ってしまったみたいな形になってた。

「あ、ごめん。なんかつまんないこと話して。」

「いえ、夏月さんも色々あるんですね。
ホント言うといつも寂しそうな顔してたから気になってたんです。」

気になってたなんて言われて
なんだか胸がドキドキして苦しくなった。

だからって私たちに何か恋みたいなモノが生まれるワケでもないんだろうけど。

ふと周りの視線を感じる。

若い女の子たちが日向くんを見てるのがわかった。

そして一緒にお茶飲んでるおばさんは何者かとでも思ってるんだろう。

恋人同士には絶対に見えないだろうな。

なんて当たり前のことを考えて
自分の年を恨んだ。

私の心の恋人とは今日でお別れだ。

日向くんは私とは生きてる時間が違う。

流行ったものも好きなテレビも口ずさむ歌も違うのだ。

「夏月さん…」

「え?」

「笑ってて下さいね。」

その一言で私は一瞬時間が止まってしまったように動けなくなった。

息をするのも忘れてしまうくらい…

日向くんは私に好意を持ってると勘違いさせるような眩しい笑顔をくれた。

「あ、うん。」

「僕は夏月さんの笑った顔が好きです。」

「え?」

今度は夏月さんが好きですってしか聞こえなかった。

日向くんは恥ずかしそうに下を向いてた。

「あはは…ありがとう。」

私は笑って誤魔化すしかなかった。

カフェから出て自転車を取りに路地裏に回ると
日向くんはそこまで付いてきてくれた。

「じゃあ、またね。」

私が帰ろうとすると日向くんくんは自転車のハンドルを掴んで私にキスをした。

「え?」

「すいません。でも…ずっとこうしたくて…」

私はどうしていいかわからずにその場に固まってしまった。

日向くんは謝罪の意味なのか、別れの挨拶なのか
お辞儀だけすると走って消えてしまった。

私は唇に触れたまましばらくそこを動けなかった。

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