1 week
Monday
月曜から金曜の9時半から17時半までが私の仕事だ。

その間、羽海は幼稚園に行き
母が夕方まで預かってくれる。

武原はいつも16時頃やってきて
同じ全集を繰り返し読んでいる。

「こんにちは。昨日はどうも。

お母さんだったんですね?

あんな大きなお子さんがいるように見えなかったから。」

武原はイマドキのオシャレな男の子なのに
こんなおばさんな私にも優しく微笑んでくれる。

正直、この微笑みは罪だ。

「一緒にいた子は彼女?
すごく綺麗な子ね。」

武原は嫌な顔1つせずに答える。

「友達です。
同じ大学の映画研究会の仲間で
今、俺たち動物園が舞台の映画の脚本書いてるんです。
だから取材っていうか、下見ですかね。」

自分が書く脚本について熱く語る武原は眩しくて
何だか胸が苦しくなった。

「武原君は名前の通りの人ね。」

「え?」

「日向(ヒナタ)って読むのよね?

キラキラして夢を語る姿が眩しいなって思っちゃって。」

「お姉さんはなんて言う名前なんです?」

「お姉さんて言うのやめて。おばさんでいいから。」

「そんな風に呼びたく無いから名前教えてください。」

ひゃー、なんてさりげなくカッコいい事言うんだろう。

そう思って名前を告げた。
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