恋愛預金満期日 ~夏樹名義~
恋愛預金は無理せずに
「おはようございます」
 私はあえて明るく言った。


「わー 髪切ったんだ!」
「短いのも可愛い」
「似合っているよ」
 など、皆が声を掛けてくれる。


 チラッと山下課長を見ると、驚いたような顔でこっちを見ていた。私は課長から目を逸らした。


 しかし、あのはげおやじ達は配慮という事が出来ない!


「お―。夏樹ちゃんバッサリ切って。可愛いけど心境の変化かい? 男にでも振られたか?」
 しかも、皆に聞こえるような大きな声を張り上げている。


 本当にムカつく!

「いいえ別に! 切った髪でカツラをお作りしましょうか? 眩しくて仕事にならないので!」

 私はニッコリと笑顔を見せ自分の席に着いた。


「いやいや、参ったなぁ」
 ハゲおやじは手で頭を撫でていた。


 言っておくが、ハゲを軽蔑している訳じゃない。

 この人達の人としてのデリカシーの無さが嫌いなだけだ!



 午後になり外回りに出ようとした時、課長が近づいて来たが、私は背を向け社員通用口へと向かった。
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