恋愛預金満期日 ~夏樹名義~
 いつものように銀行の入り口を入ると、髪が軽くなったせいか? 
 銀行の雰囲気なのか? 
 なんか気持ちがいい…


「いらっしゃいませ」
 の響きも気持ち良くて笑顔で会釈した。


 総合窓口へ行くと美也さんが驚いて声を上げた。

「うわ―。思い切ったね、凄い! でも、凄く似合ってる」


「本当に? ありがとう」
 私は自然に笑顔になれて、美也さんが褒めてくれたのが凄く嬉しかった。


 私は手形の一覧を貰いに窓口へ向かった。


「沖田建築です。手形の一覧の頂きたいんですけど……」
 
 私が言う前に、いつもなら彼は封筒を机に置いてくれるのに、今日は封筒が彼の手の上で止まったままだ。


「髪、切ったんですね…… 素敵です」
 彼が挨拶よりも先に口にした。


 私の胸の中がぐっとなった気がした。

 多分、素敵なんて言われた事が無いからだ……


 でも、なんか嬉しい… 

 この人、お世辞や嘘は言わないような気がする。

 勝手な思い込だけど……


「ありがとうございます。でも、こんな時期に切っちゃだめですね。襟元が寒くて……」
 私はクビを竦めた。



 それ以上、彼は何も言わなかったが、席を立った私の方をずっとを見ていた気がした。

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