恋愛預金満期日 ~夏樹名義~
 私はいつのように銀行の総合窓口で手続きを済ませると、ソファーに腰をおろした。

 雑誌を手に取り、ふと融資窓口に目をやった。
 彼が顧客の相手をしているが、あの人あんなに真剣な目をいつもしていただろうか? 
 きりっとした眼差しで顧客への説明をしている。


 そんな事を思いながら雑誌に目をむけるが、今度は為替窓口の方から、英語でまくし立てる声が聞こえた。

 ところどころだが聞き取ると、どうも旅行者らしくトラベラーズチェックを無くしたようだ。



「海原さん。お願いできますか?」

 為替担当の人の声に彼が為替の窓口に駆け付けた。

 すると、淡々と英語で話だし、さっきまで騒いでいた外国人旅行者も彼の話に耳を傾けた。

 私は彼の発音とスムーズな英語力に見入ってしまっていた。


 落ちつた姿勢で、相手が納得できるように説明している事が伝わってきた。


 外国人旅行者も手続を済ませると、安心したように何度も頭を下げ帰って行った。


 英語か……


 そろそろ、真剣に考えるべきかもしれない……


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