恋愛預金満期日 ~夏樹名義~
 次の日、銀行へ行くと私は窓口の美也さんに昨日の通帳のお礼を言った。

 彼にもお礼を言わなければと、融資の窓口へ足を運んだ。


「昨日は通帳すみませんでした」
 私は彼に頭を下げた。


「いえ、こちらこそお忙しいのにすみません」
 彼は深々と頭を下げてくれた。
 

 彼の隣に座る、同じく融資担当の神谷さんがくるっとこちらへ椅子を動かした。

「雨宮さん、気にしないで下さい。僕達デスクワークだから、たまには体動かした方がいいんですよ。昨日は走れてちょうど良かったですよね。海原さん?」
 
 神野さんは背も高く、スポーツマンぽい爽やかな印象の人だ。


「あ―。分かります。私も午前中は机に座ったままだから、午後の外回りが楽しみなんです」


「運動不足は健康に悪いですよね」
 彼が言った。


「エコノミー症候群になりそうですよ」
 神野さんの顔は何故か引きつっている。


 私はエコノミーと言う神谷さんの事葉に忘れていた事を思い出した。

「あっ。エコノミーって言えば私飛行機に今度乗るんですよ。クレジットカード作らなきゃ、って思っているんですけど…… 何処の窓口に行けばいいのかな?」


「私がお作りします!」
 彼はそう言うと、凄い勢いで書類を持って戻って来た。


「こちらに記入して頂いて、ここに印鑑をお願いします」


「出来上がるまでに何日位かかるんですか?」


「三週間程ですかね」


「えっ。急がなきゃ! 明日記入して持ってきますね」


「はい。お待ちしています」
 彼は笑顔で言ってくれた。


 良かったぁ…… 定期作れなかった事、気を悪くしてないみたいだ。

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