恋愛預金満期日 ~夏樹名義~
「あの…… 私は、本当の気持ちを海原さんに言うべきなのか迷っていました。こんな事を言ったら、ずるいと思われるかもしれないけど、伝えた方がいい気がします」


「言ってみて下さい。ずるいかどうかは、僕が決めます」
 彼の声がいつになく男らしく感じた。


「確かに、海原さんのおっしゃる通り、私はあなたに胸が高鳴るような恋をしているわけではありません……」
 彼は少し寂しそうに笑ったが、私は話を続けた。

「でも、気になるんです。あなたが町で声を掛けてくれた時、正直ほっといて欲しいと思ったし、ただの銀行の人としか思っていませんした。でも、あなたは何も聞かずに、ただ一緒に笑ってくれていた。私の寒さばかり気にして…… もっと落ち込むと思って居た私の心が、なにかに包まれている気持ちで居られたのは、あなたのお蔭です。不思議な人だと思いました。いつも、アタフタしているあなたを見ていると、いたずらして見たくなるんです。でも、ちょっとやり過ぎちゃいましたね……」


 私は、コーヒーを口に含み、息を整えた。


「突然、あなたの家に行ったら、きっとびっくりして笑うだろうな? なんて勝手な事思っていたんです。でも、あなたは怖い顔して、一言も話さなかった。私…… あなたを怒らせたと思ったら、なんだか悲しくなって来ちゃって、自分でも、こんな気持ちになる事に驚きました。一緒に居ると、安心して暖かい気持ちになれます。これはきっと大切な事なんだて思います。だけど……」

 私は彼の目を見た。


「今結婚と言う選択は私に出来ないんです。自分の夢が大事で…… 勝手な事を言ってごめんなさい。これが、今の私の正直な気持ちなんです」

 私は自分の勝手な言葉に声が擦れてしまった。



「ずるくなんかないですよ。あなたが僕の事を、そんな風に思っていてくれたなんて、想像もしていなかった。それだけで、僕には奇跡のような物ですから…… こんな話をしたら、笑われちゃうかな?」


「なんですか?」
 私は言葉の続きが気になり彼を見た。
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