恋愛預金満期日 ~夏樹名義~
「実は…… あなたが家へ来た時の記憶が僕には無いんです」
「えっ」
私には意味が解らなかった。
「あまりに突然で、玄関に立っていたあなたの姿があまりに綺麗で…… なんていうか、僕には衝撃過ぎたんですかね…… あなたを見た瞬間、放心状態になってしまって、まあ、気絶に近いですね…… 母親の怒鳴る声で、やっと我に返ったんです。もう、必至で追い掛けましたよ。だから、あなたが悲しむような事では無いんです。あなたが思っているより、ずぅーっと僕はあなたが好きなんです。あなたが突然現れたら、僕はこんな始末です」
「え―。覚えてないんですか? 私、てっきり常識が無いと思われているとばかり…… ちょっとほっとしたかな……」
私はなんて勘違いをしていたのだろう?
彼は本当に私を好きでいてくれたんだ。
ただ、ただ私を受け入れようとしていてくれたんだ。そう思うと自然に笑みがこぼれてしった。
「それなら良かった……。あの…… 今更なんですが、聞きにくい事を聞いてもいいですか?」
彼が申し訳なさそうに下を向いた。
「ええ」
「誰か他に好きな人とか居るんですか?」
そうだよね、彼だってずっと苦しかったんだ……
「山下課長の事ですよね?」
「まあ……」
彼は少し戸惑ったように言った。
「彼とは仕事以外では会っていません。軽い人ですから、今でも普通に話しかけてきますけどね。でも、私も今はなんとも思って居ません…… あの時は本当に悲しくて、辛かったけど、思いっきり泣いて、側で頭を撫でてもらっているうちに悲しい事が溶けていくみたで…… また、勝手な事言っていますね…… ごめんない……」
もっと上手く言葉にしたいのに、自分の勝手さが出てしまう。
「いいえ、そんな風に思ってもらえただけで、僕は十分です。ありがとう……」
なんでこんなに、私なんかを……
「そんな、私の方が助けてもらってばかりで……」
「助けられたのは僕の方ですから……」
彼は大きく深呼吸をして、私に真っ直ぐ目を向けた。
「それで、いつオーストラリアへ?」
「来月です」
「そうですか…… ぼくも今週末東京へ引っ越します。これで、お別れですね。もう、お会いする事もありません…… お元気で……」
彼は少し涙を目に溜めて言った。
「ええ……」
そうか? そうだよね…… これでお別れなんだ。
仕方ない、自分で決めた事。
結局待っていて欲しいなんて、私には言えなかった……
いや、言えるはずが無かった……
私が唇をぐっと噛みしめた時だった、マスターが私達のテーブルに、サラダとパスタを置いた。
「えっ」
私には意味が解らなかった。
「あまりに突然で、玄関に立っていたあなたの姿があまりに綺麗で…… なんていうか、僕には衝撃過ぎたんですかね…… あなたを見た瞬間、放心状態になってしまって、まあ、気絶に近いですね…… 母親の怒鳴る声で、やっと我に返ったんです。もう、必至で追い掛けましたよ。だから、あなたが悲しむような事では無いんです。あなたが思っているより、ずぅーっと僕はあなたが好きなんです。あなたが突然現れたら、僕はこんな始末です」
「え―。覚えてないんですか? 私、てっきり常識が無いと思われているとばかり…… ちょっとほっとしたかな……」
私はなんて勘違いをしていたのだろう?
彼は本当に私を好きでいてくれたんだ。
ただ、ただ私を受け入れようとしていてくれたんだ。そう思うと自然に笑みがこぼれてしった。
「それなら良かった……。あの…… 今更なんですが、聞きにくい事を聞いてもいいですか?」
彼が申し訳なさそうに下を向いた。
「ええ」
「誰か他に好きな人とか居るんですか?」
そうだよね、彼だってずっと苦しかったんだ……
「山下課長の事ですよね?」
「まあ……」
彼は少し戸惑ったように言った。
「彼とは仕事以外では会っていません。軽い人ですから、今でも普通に話しかけてきますけどね。でも、私も今はなんとも思って居ません…… あの時は本当に悲しくて、辛かったけど、思いっきり泣いて、側で頭を撫でてもらっているうちに悲しい事が溶けていくみたで…… また、勝手な事言っていますね…… ごめんない……」
もっと上手く言葉にしたいのに、自分の勝手さが出てしまう。
「いいえ、そんな風に思ってもらえただけで、僕は十分です。ありがとう……」
なんでこんなに、私なんかを……
「そんな、私の方が助けてもらってばかりで……」
「助けられたのは僕の方ですから……」
彼は大きく深呼吸をして、私に真っ直ぐ目を向けた。
「それで、いつオーストラリアへ?」
「来月です」
「そうですか…… ぼくも今週末東京へ引っ越します。これで、お別れですね。もう、お会いする事もありません…… お元気で……」
彼は少し涙を目に溜めて言った。
「ええ……」
そうか? そうだよね…… これでお別れなんだ。
仕方ない、自分で決めた事。
結局待っていて欲しいなんて、私には言えなかった……
いや、言えるはずが無かった……
私が唇をぐっと噛みしめた時だった、マスターが私達のテーブルに、サラダとパスタを置いた。