恋する猫と魔法使い
一人でそんなことをぼやいていると、頭上から久しぶりに聞く高い声が聞こえてきた。


「ゾラ兄殿―、ゾラ兄殿―、」


その俺を呼ぶ声に反応して上を向くと、俺の妹君であるネルが大きな翼を広げこちらへと来る。


「どうした、ネル」


ネルは視線を俺から外して言う。


「とある人間界の大きな事故で沢山の人間の魂を持ち帰ったのですが…。この状況である故に、ほとんどの魂を落としてしまいました。本当に申し訳ありません。ゾラ兄殿」


そう言って今にも泣きだしてしまいそうなネルの頭にそっと手を置いて黒く染まった空を見上げた。


「大丈夫だ。いくつか魂は残っているんだろう?」


俺の質問にネルはうなずき、涙目で答える。


「はい、大物を70程…。亡くなられた数は500程です。」


俺はネルを強く抱きしめ安心させるように言った。


「それくらいあれば充分だ。すべての魂が星になるわけではない。足りない分は俺の魔法を合わせてカバーすれば何とかなるだろう。」


ネルが俺の腕の中でフッと笑う。
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