恋する猫と魔法使い

ネルは俺の後に回り込んで大きな翼を広げ、俺を抱きしめるように優しく後から包み込み寄り添うようにして飛び立った。

そして、光の速さで俺の翼となりネルはナツカのところまで俺を連れて行く。

一瞬、ミアがナツカのところに向かっているのが見えたが、ネルはミアを気にすることなく無視して追い越した。

ミアが見えなくなったところで、ネルは少しだけスピードを落とし優しい声音で俺が今まで聞いたことがなかったネルの気持ちを告げられた。


「わたくし、ゾラ兄殿がわたくしの主で本当によかったと思っております。」


俺はネルのその言葉に耳を傾けた。


「出来の悪いわたくしのことをゾラ兄殿は必要としてくださった。いつも、人間界では死神と呼ばれているわたくしをゾラ兄殿はわたくしがお戻りになるといつでも笑顔で出迎えてくださいます。ゾラ兄殿の笑顔を見ると、わたくしはどんなに人間界で嫌なことや辛いことがあったとしても、忘れることができます。」


ネルの打ち明けた言葉を聞いて、本当はネルが人間界へ行くのが辛かったことが伝わってきた。