朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
1・敵国に嫁ぐことになりました
がらがらと回る車輪の音の間に、前を走る二頭の馬の蹄の音が響く。窓の外をのぞくと、風に煽られた木々の葉が揺れていた。
「ねえ、あとどれくらいで着くの?」
城を出て三日。半年前までやっていた戦争のせいでほとんどの宿は物資が足りず客もいない、営業不可能な状態。
目的地に向かうルート内にある貴族の館で休ませてもらいながら、私は今日も馬車に揺られる。
向かいに座っているのは、世話人としてついてきているボートレイト伯爵。生前の父によく尽くしてくれていた人物だ。
「あと二時間ばかりですね。もう少しです」
ボートレイト伯爵は胸ポケットから出した懐中時計を見て答える。丸メガネの奥の目は疲れでしょぼしょぼしていた。ほとんど白くなった髪は後ろに流されており、鼻の下にぴんと端のはねたヒゲが生えている。
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