朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
こっちはダメだ!
幕をめくって馬車の方へ戻ろうとする。けれど馬車の向こうからも、十頭ほどの狼が目をぎらぎら輝かせて近づいてきていた。
「囲まれたようです」
ボートレイト伯爵が駆け寄ってきた。その顔は青ざめている。
「ど、どうしよう」
あっちを見てもこっちを見ても、狼と目が合ってしまう。ぐるりと取り囲まれているみたい。
アミルカの兵士が私に駆け寄り、それぞれ剣を抜く。五人で私を守る壁のように立ち、他の五人は狼の方へじりじりと寄っていった。
狼たちは兵士の剣を恐れる様子がない。低く喉を鳴らしながらゆっくりと近づいてくる。かと思うと突然速度を上げ、後ろ足で地を蹴った。
「わあああっ」
御者の悲鳴が上がる。狼が馬に襲いかかり、いななきと共に馬車が大きく揺れた。
兵士が剣を振り回す。ひらりと避ける身軽な狼。がら空きになった兵士の脇に、別の狼が噛みつく。たちまち悲鳴と怒号が森の中を飛び交う。
「きゃああああっ!」
万事休すです、お母様。約束を果たせなくてごめんなさい。