朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令


「ミリィ様、もう猶予はありません。これをお使いください」


伯爵はもう一方の胸ポケットから何かを取りだす。差し出した手のひらにギュッと握らされたのは、小さな小瓶だった。


「新種の毒薬です」

「でも、エドガーに薬は……」

「ですから、新種だと申しているのです」


伯爵は一応左右を見て、人がいないことを確認するとよろよろと立ち上がり、耳打ちする。


「医師の話では、おそらく国王は毒の免疫を持っているとのことでした」

「免疫?」

「あらゆる毒を体内に入れ、それに対抗する力を自分の体の中に蓄えるわけです」


そんな。自分で毒を食らうなんて。国王って、そこまでしなきゃいけないの? いつでも暗殺される可能性があるから?


「けれどこれはまだ世間に出回っていない、新種の毒薬。アミルカ製です。戦争の兵器を開発する機関で、偶然発見されたもの。これはおそらく、国王も免疫がないのではと」


ごくりと喉が鳴る。そんな恐ろしいものが、この手の中にあるなんて。


「取り扱いには十分注意してください。瓶を開けて外気に触れた途端、毒は気体になります。空気に交じり人の体内に入り込む」


ということは、瓶を割ったりしてもダメってことね。絶対。


「王女様、どうか王妃様の悲願を達成してください」


ボートレイト伯爵が再び崩れ落ちた。と思ったら、彼は自ら膝を折り曲げ、両手と額を廊下の床に擦り付けた。


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