朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令


「着きました」


センテムの手を借りて馬を降りる。しかし、周りは見たことのある野草ばかりで、フェロミアらしき花は一輪も見当たらない。


「ここにフェロミアがあるの?」


きょろきょろと見渡していると、センテムは馬の腰に付けていた荷物を下ろす。その中からロープを取りだした。


「ええ」


彼はロープを私の肩くらいの高さがある大きな岩に括りつけると、私に近寄る。


「な、なに」


抵抗する間もなく、腰にがっしりとロープが巻き付けられた。ちょっと痛いくらいだ。


「こちらへ、王女様」


センテムはスタスタと先を歩く。ちょっと待って。そっちは岩肌しかない、断崖絶壁。まさかそんな方にあるの?

こわごわセンテムの隣に立つ。そこはやはり断崖絶壁で、下には今通ってきた深い森が広がっている。下から吹いてくる風が、髪をさらった。


「よく見てください。あれです」


いや、もう高いとこ怖いよ。あまり下を見たくないよ。どうしてこんなに高い所まで来て、わざわざ下を指さしてるの。まさかと思いながら断崖から身を乗り出し、センテムの指す方を見ると。


「うそ~!」


切り立った崖の途中、やっと人の片足が乗りそうな岩の突起がある。その上に紫色の花がぽつんと咲いていた。ここから……どうかしら。センテム5人分くらいは降りなきゃいけないかしら。こんな命がけのお花摘みだなんて聞いてないんだけど。

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