朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
「ラッセル様のお母様は再婚でしたから、儀式も簡略的なものでした。あの花も採取していません」
センテムは正直に事実を述べる。ほらね。やってない人だっているんじゃん。あんなところまで降りるの怖い。やだ。
「ミリィ王女様。エドガー陛下の繁栄のために、是非!」
突然がばりと大きな体を折り曲げて土下座をするセンテム。嘘でしょ。この人どこまで真面目なの。
「や、やめてよ。わかったわよ。わかったから……」
ちょっとだけ顔を出して断崖に咲くフェロミアを見下ろす。はあ……私、何やってるんだろ。エドガーを暗殺しようとこの国に来たはずなのに、着実に王妃になろうとしてる。
「もういい。どうせあの花を取らなきゃ解放してもらえないんでしょ」
色々と考えるのはもう飽きた。震える足で崖の先に立つ。するとセンテムが起き上がり、縄を握った。
「私がいます。安心してください」
怖いものは怖いわよ。ボートレイト伯爵よりもだいぶ頼りになりそうだけどね。
センテムの指示に従い、ロープを持ち、岩肌が目の前に来るように空を背にしておそるおそる足の裏を岩につけ、少しずつ降りていく。
「上手ですよ、王女様」
下を見ちゃいけないわ、絶対に。すぐに手の平に汗がにじんできた。ロープを持つ手が滑りそう。体重を支える腕が、すぐにぶるぶると震えだす。これ、ロープを切られたりしたらひとたまりもないわね。