朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令


額に浮いた汗をどうすることもできず、まばたきをしながら上を見上げる。すると……。


「なに……?」


崖の上から真剣な顔で私を見下ろすセンテムの背後に、黒い影が。あれは……人? いったい誰が……。

親衛隊の誰かが何か用事でもあって来たんだろうか。そんなふうに推測しているうちに、影が動いた。手に何かを持ち、それを高く掲げ、そして振り下ろそうとして……。


「センテム!」


私が叫ぶより早く、センテムが背後の気配に気づいた。ぐるりと後ろを向いた彼は、ロープを持ったまま後ろに飛びのく。センテムがいた場所に振り下ろされたのは、鋭いナイフだった。


「わああああっ」


センテムが動いたから、ロープが大きく揺れる。岩肌に付けていた足が離れ、体が宙にぶらんと浮いた。

ナイフを持った男に見覚えはない。びゅんびゅんとめちゃくちゃになぎ払われるナイフを、センテムは体躯の大きさから想像できないくらい素早く避けた。

このままじゃ彼が危ない。せめて両手が使えれば。


「センテム、手を離しなさい!」


彼がロープを離しても、その先はあの大きな岩に括りつけられている。怖いけれど、谷底まで落ちることはないだろう。


けれど聞こえていないのか、センテムはロープを離そうとしない。空いた方の手を素早く懐に入れたと思うと、そこからピストルが出てきた。


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