朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
「い、いやああああ!」
大理石の上を黒い蜘蛛がこっちに向かって走ってきてる! 全身にびっしり細かい毛が生えていそうな、手のひらサイズの大きな蜘蛛。足は太く、丸いお腹には赤い模様が。
「毒蜘蛛ですわ!」
ルーシアが叫ぶ。そんな、どうしてこんなところに毒蜘蛛が。ちゃんと掃除しておいてよね!
「わ、わ、わわ」
気づけばその一匹だけじゃなく、あちこちから蜘蛛がこっちに近づいてきている。まるで、私の全身から漂う花の香りに引き寄せられるみたいに。
「王女様、早く脱衣所へ!」
「ひいいいいい~!」
蜘蛛嫌! 虫とか爬虫類とか、ほんと無理~!
滑らないように気を付けながら、裸で脱衣所まで疾走する。後ろからカサカサと、私を追いかけてくる足音が聞こえた。浴室の扉をルーシアが閉める。けれど蜘蛛が一匹、すり抜けて脱衣所に入ってしまった。
「だれか、誰か助けて~っ!!」
声が割れるくらいの絶叫が響き渡る。すると。
「どうかしたか!」
大きな音がして、脱衣所の扉が開けられた。かけられていた鍵が壊れて吹っ飛ぶ。そこにいたのは、軍服姿のエドガーだった。
「蜘蛛っ、蜘蛛!」
「蜘蛛?」
『なんだ、蜘蛛かよ』と言わんばかりの表情でため息をつくエドガー。しかし私の足元に近づいてくる大きな蜘蛛を見て、表情が変わった。