朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
「私が襲われたのかしら……センテムが襲われたんじゃなくて?」
「いや、その可能性は低いだろう。今日の風呂での事件も、同じ犯人が仕組んだことかもしれない。飛び道具を使われなくて幸いだった」
たしかに、ナイフや蜘蛛で助かった。物陰からピストルで狙われたらひとたまりもなかった。崖は物陰から狙うのが難しいし、お風呂も人が隠れて待っていられるようなところがなかった。だからなんとか助かったんだ。
「あの蜘蛛って、そんなに毒性が強いの? ちょっとした嫌がらせとか、排水溝からわいてきたとかじゃなく?」
「あほ。うちの使用人の掃除の熱心さを侮るな。って問題はそこじゃない。あの蜘蛛は南の森のごく一部にしかいない毒蜘蛛だ。北端にあるこの宮殿で見ることはない。ひと噛みで牛も即死してしまうくらいの毒性を持っている」
「牛も!?」
嘘でしょ。いくら大きいといっても手のひらサイズの蜘蛛が牛を殺せるの。ということは、私も噛まれてたら今頃棺桶の中だったのね。想像したらぞっとした。ドレスの中に氷を放り込まれたように、冷たい汗が背中を伝っていく。
「水も平気な蜘蛛だからな。排水溝から誰かが放ったと考えられるだろう。頭もいいから、よほど人を襲うように調教されていたとみえる」
「ひいいい~、蜘蛛って調教できるんですか……」