朝から晩まで!?国王陛下の甘い束縛命令
「お前なんかに渡すか」
エドガーが私を抱き寄せ、子供のようにべーっと舌を出す。なんなのよこの兄弟。大人げないったらありゃしない。
ラッセルは反論せず、背を向けるとひらひら手を振りながら退場していった。
「あいつ、いきなりなんなんだろうな」
「きっと、おめでとうが素直に言えなかっただけよ」
「……そういうことにしておいてやるよ」
ぐりぐりと頭をなでられる。そんな私たちに、ルーシアが声をかけた。
「陛下、王妃様の準備がありますので」
「そうか。そりゃあ急がなきゃな」
すっと手を離すエドガー。準備ってなんの? もう式も宴も終わったじゃない。あとは体を拭いて寝るだけ……。
「王妃様、こちらへ。では陛下、のちほど」
「ああ、頼む」
エドガーは私を置いてすたすたと先に行ってしまう。
「ねえ、これから何の準備があるの?」
誰もいなくなった広間からエドガーとは別の方向に連れていかれる。途中で尋ねると、ルーシアは信じられないと言うような顔で私を見た。
「王妃様! 今夜は大事な初夜でございますよ!」
あ……ああ! そうだった! 昼間いっぱいいっぱいで忘れてた!
一気に緊張が高まる。どうしよう。逃げ出したい。けど、逃げられるわけない。あああ……。
未知の世界への不安が押し寄せる。
「大丈夫、陛下がうまいことやってくれますわ」
ルーシアがきっぱり言う。私の気持ちを見透かしているみたい。
そっか、そうかも。エドガーに任せておけば大丈夫よね、多分。そう自分に言い聞かせるけど、一度暴れ出した心臓はなかなかおさまらなかった。